九工大通信 KYUTECH TIMES WEB

vol.67 特集 九工大Now

国立大学法人九州工業大学 学長 安永 卓生

経歴
1965年、愛媛県生まれ。東京大学で博士(理学)を取得。日本学術振興会特別研究員を経て、東京大学理学部助手として研究に従事。2001年に九州工業大学情報工学部へ着任し、助教授、教授として教育?研究に携わる。その後、副学長(入試?広報担当)、大学院情報工学研究院長、理事?副学長として大学運営の中心的役割を担い、2026年4月より九州工業大学学長に就任。本学が出資する 株式会社Kyutech ARISE の取締役(CTO)も兼務し、研究成果を社会へ広げる取り組みを戦略的に位置づけている。

社会の変化と大学の使命

2026年4月、九州工業大学の新学長に就任した安永卓生。就任にあたり、まず心に浮かんだのは「この大学は、まだ本領を発揮し切れていないのではないか」という思いだったという。

「本学は、ものづくりと工学教育、情報工学を中心に、日本の産業と社会を支えてきた誇りと実績を持つ大学です。その力は確かです。しかし同時に、その力を十分に社会へ出し切れていないのではないかとも感じました。その力を引き出し、社会に伝え、次の価値へとつなげること。それが学長としての私の責任だと考えています。」

社会の変化は、かつてない速度で進んでいる。少子化、産業構造の転換、テクノロジーの急速な進展。大学に求められる役割もまた、変わりつつある。

「大学は、研究成果や人材を“供給する”存在にとどまるべきではありません。知を生み出すだけではなく、それを社会とともに“編み直し、実装する”主体であるべきです。」

「知のエコシステム」という構想

その思いは、2025年に策定した「九州工業大学ビジョン2040」にも体現されている。そこに込められたのは、「研究による知の創出」と「人が生み出す価値の最大化」を両輪とし、世界にイノベーションを生み出す大学であるという意思だ。

ビジョンの中核にあるのは、「知のエコシステム」という考え方である。大学で生まれた技術と知見を社会へとつなぎ、社会の中で磨かれたニーズや新たな問いを再び大学へ取り込み、次の創造へとつなげる循環の仕組みだ。

「人口減少社会において、大学は若者だけの場ではありません。年齢や立場を超えて学び続ける人を支える存在である必要があります。知を循環させ、多様な人々が繋がる“知のプラットフォーム”として機能することが、これからの大学の使命です。」

その使命を実現するために掲げる改革の軸が、「基盤」「経営」「文化」の三つである。

01|基盤 ― 可視化が未来をつくる

大学が持つ人材、組織、研究活動、資源といった有形?無形の価値を、デジタル技術によって可視化し、共有できるインフラを整える。

「状況を正確に把握できなければ、正しい判断はできません。データ集積の仕組みを整え、ダッシュボードによってリアルタイムに状況を把握する。DXは管理を強めるためではなく、人が本来注ぐべき教育?研究?対話の時間を取り戻すためのものです。」

02|経営 ― 「投資する大学」への転換

「資産を消費する大学」から「資産に投資する大学」への転換を掲げる。

「教育?研究?人材への投資が、大学の力を持続的に高めていく好循環を築きたい。あえて『稼ぐ大学』という言葉を使うなら、それは利益追求ではなく、大学の力を自ら高め続けていく、という意味です。国の方針をただ受け入れるのではなく、主体的に読み解き、活かしていく姿勢が重要です。」

03|文化 ― 九工大らしさを、未来へ

創立117年を迎える九州工業大学。開学以来掲げてきた「技術に堪能なる士君子」の養成という理念を、未来にどう継承するか。

「本学は工学系単科大学として、技術にこだわり、尖ることを恐れない文化を育んできました。同時に、専門をつなぎ、翻訳し、新しい価値を生み出してきた大学でもあります。挑戦する人が集まり、挑戦が連鎖していく環境をつくりたい。」

教育?研究の深化

教育面では、メジャー/マイナー制や副プログラムなどを通じて学びの多様性を確保し、学生が主体的に自らを育てられる環境づくりを進める。アンコンシャス?バイアスへの対応や女子学生支援など、多様性の確保も重要なテーマだ。

※主な専門分野とそれ以外の分野を体系的に学修する仕組み、学位プログラム以外に学べる教育プログラム。

国立大学法人九州工業大学 学長 安永 卓生

研究面では、研究時間と研究資金のセーフティネットを整え、教員が本来の研究に集中できる環境を確保する。社会人博士の受け入れや、社会人の学び直しを支えるリカレント教育の展開も視野に入れる。

「社会連携は目的ではなく手段です。教育と研究を通じて生み出す知の価値創造につながる連携でなければ意味がありません。」

学び続けるエンジニアへ

では、九州工業大学が育てたい人材像とは何か。

「自らの強みを理解し、卒業後も主体的に学び続けるエンジニアです。試行錯誤や失敗も含めて学びと捉え、自分の経験や工夫を言葉にして周囲と共有できる力を持つ人材。専門を深めながらも、異なる分野と接続できる人こそが、新しい価値を生み出します。」

生成AIの登場は、学びのあり方そのものを変えつつある。

「知識を覚えるだけではなく、AIと対話しながら、自らの知識やスキルを高め、判断する力が求められています。未知の時代を切り拓くエンジニアを育てたい。」

卒業はゴールではない

最後に、高校生や保護者へのメッセージを尋ねた。

「進路選択は、不安を伴うものです。しかし大切なのは『何を学ぶか』だけではなく、『どのように学び続けるか』です。九州工業大学での学びは、卒業がゴールではありません。社会に出てからも学び続けるための出発点です。技術は進化し続けます。だからこそ、学び続ける姿勢そのものが最大の力になります。

本学ではこれを『学び増し』と呼びます。一度身につけた知識や技術に新たな学びを重ね、自らの専門性を更新し続けること。それが変化の激しい時代を生き抜く力になります。」

挑戦する人が集い、挑戦が循環する大学へ。
九州工業大学は今、新たなフェーズへ踏み出そうとしている。

山口 駿範さん

Q1

趣味は?

読書。気づけばKindle蔵書4,000冊超。漫画やアニメも好きな“活字オタク”です。『ポーの一族』や『機動戦士ガンダム』は、今も心に残る作品です。

Q2

朝型派?夜型派?

(超)朝型です。毎日3時に起きる生活を、学生の頃から続けています。

Q3

動画は倍速派?等速派?

基本は等速派。気になるところは何度も見返します。

Q4

剣道歴は?

小必博官网から通算25年。現在は錬士六段。学長室にも竹刀があります。

Q5

専門を極める派?分野横断派?

分野横断派。異なる分野がつながる瞬間が一番わくわくします。

Q6

必須アイテムは?

ウエストポーチ。財布?スマホ?鍵?時々文庫本。これがないと一日が始まりません。

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